小さい頃から食事後には歯をよく磨くように言われましたが、これは虫歯を予防するためで、以前は歯についての問題はもっぱら虫歯でした。虫歯にかかると歯が痛くなりますし、治療も痛いので子供達はしっかり歯磨きを行うようになり、虫歯は減ってきました。次に注目されてきたのは歯並びです。見栄えを良くするために矯正が行われるようになり、口元の整った女性が多くなりました。
現在の歯科領域で一番関心が持たれているのは歯周病です。2001年のギネスブックに全世界で最も蔓延している疾患は歯周病と掲載されましたが、何と世界の成人の半数は歯周病に罹患していると考えられています。歯周病という病名は歯肉炎と歯周炎の2つをあわせた総称で、前は歯槽膿漏と呼ばれおり、もっぱら年寄りの病気と思われていました。この歯周病は歯周病菌の感染により発症しますが、発症するまでの期間や発症してから進行するスピードが遅いので、発生していても自覚しにくいという特徴があります。このように自覚しにくいので歯周病の発症を防ぐには、家庭でのセルフケアだけでは不十分で歯科医院での定期的なケアーが不可欠です。残念ながら、どちらか一方が欠けても歯周病の発症を防ぐ事はできません。以前に比べて歯磨きの実施が浸透して虫歯で歯を失う事は随分減ってきましたが、現在は歯周病によって歯がなくなってしまいます。歯がないと固いものを食べることが難しく栄養が偏り、その上話すこともうまく出来ないなど、多くの問題が起こります。そのため認知症の発生率が増加すると言われています。
歯周病は、歯の周りにある歯垢と呼ばれる細菌によって発症します。歯垢(プラーク)は白くて粘々した付着物で、食後24時間以内に形成されますが、歯磨きで取れるのは6割程度です。歯磨きで取れなかった歯垢(プラーク)は、約2日後には歯石になり、日が経つと歯石は分厚くなります。歯石は自分で取るは難しく、歯科医院での歯石除去が必要となります。歯石が存在すると、虫歯や歯周病になりやすくなりますし、口の中の細菌が増えて口臭の原因になります。口臭は自分では気づきにくく、口臭予防のためにも定期的な歯石除去が必要です。
少し専門的な話ですが、歯垢が増加して酸素が少くなると酸素を嫌う嫌気性菌が多くなります。この歯周病菌は口の中に存在するだけでなく、歯肉から身体の中に侵入するため、身体は菌を殺して侵入を抑えようとします。これが歯周病のはじまりで、歯肉からの出血・発赤・腫脹などの炎症症状が見られます。この中でも、出血は歯周病菌と白血球との戦いを示しています。出血をそのままにしておくと、歯垢は歯周ポケットの中に潜り込み、どんどんと歯周組織を破壊して炎症を拡大します。歯周病が発生すると、口の中で常に炎症が継続するのです。
この炎症によって生じる毒性物質が歯肉の血管から全身に入り、様々な病気を引き起こし、悪化させることが明らかになりました。歯周病で作られる炎症性物質は、血糖値を下げるインスリンの働きを悪化して糖尿病の発生を促進します。それ以外にも早産、低体重児出産、肥満、血管の動脈硬化により心筋梗塞や脳梗塞などの発生にも関与しています。また、歯周病菌のなかには、誤嚥(食物が食道ではなく気管に入る)により気管支から肺に侵入し、高齢者の死亡原因として知られている誤嚥性肺炎の原因になります。その上歯周病菌のひとつであるP.g菌(Porphyromonas gingivalis)がもつ”ジンジパイン”というタンパク質分解酵素はアルツハイマー病を悪化する可能性が示唆されています。
このように歯周病は口の中の炎症により歯を失うだけでなく、体の中に侵入して重篤な病気を発生させることが明らかになっています。そのため歯周病の予防や治療を行うと、全身の様々な病気のリスクを下げることができます。日々の歯磨き・口腔ケアを見直し、定期的に歯科を受診して健康な体を維持するように努めましょう。
私は歯の治療を行うことにより、歯だけでなく体全体が健やかに維持されるよう努力しています。以前は「病は気から」と言いましたが、最近は「病は口から」と考えています。
歯垢(プラーク)は白くて粘々した付着物で、食後24時間以内に形成されますが、歯磨きで取れるのは6割程度です。歯磨きで取れなかった歯垢(プラーク)は、約2日後には歯石になり、日が経つと歯石は分厚くなります。歯石は自分で取るは難しく、歯科医院での歯石除去が必要となります。歯石が存在すると、虫歯や歯周病になりやすくなりますし、口の中の細菌が増えて口臭の原因になります。口臭は自分では気づきにくく、口臭予防のためにも定期的な歯石除去が必要です。
口の中には500種類以上の細菌が存在し、その中で歯周病の発生に関係する細菌を歯周病菌と呼んでいます。歯周病菌は空気を嫌うので、空気のない歯周病ポケットの奥底が歯周病菌のすみかです。歯磨きが不十分だと、取集病ポケットが深くなり、主臭病菌が増えます。主臭病菌を口の中かから排除するのは難しいですが、歯磨きで歯周病菌がいるプラークを取り除くと歯周病菌が空気にさらされて弱まり、減ってきます。このように歯磨きは重要ですが、定期的にクリニックを受診して口腔内のケアーを行うことが有用です。
歯周病が進行すると、炎症物質が産生され、血中内に侵入する。そのため膵臓でのインスリン産生能が低下し、血糖値が上昇する。動脈硬化を誘導する物質も分布され、動脈硬化が進行する。
噛む行為は海馬の血流量を増加する。
歯周病は口腔内の問題に留まらず、心筋梗塞や狭心症などの原因となる動脈硬化症や糖尿病、さらに関節リウマチなど重要な疾患の発生リスクを高めることが知られています。これまでそのメカニズムについてプラーク中の歯周病原性細菌が炎症により損傷した歯周ポケット上皮より組織内に侵入し、全身循環を介して遠隔組織に影響する、さらに歯周炎組織で産生された各種の炎症性サイトカインが全身循環を経由して血管、脂肪組織、肝臓などに持続的に軽微な炎症を起こすと考えられてきました。しかし、歯周病が全身疾患の発症や進行に関与するメカニズムについては決定的な説はなく、不明な点が多い。山崎らは歯周病原細菌である Porphyromonasgingivalisを口腔に投与するモデルを用いて、肥満モデルや糖尿病モデルのマウスで見られるのと同様に、腸内細菌叢が変動して血中内毒素レベルが上昇することを明らかにした。腸内細菌叢の変化は動脈硬化症、糖尿病、関節 リウマチ、非アルコール性脂肪肝疾患、肥満など歯周病とも関連する疾患のリスクファクターであることが知られている. 大量に飲み込まれた歯周病原細菌が腸内細菌叢を変動させるというマウスにおける実験結果は、従来の仮説では十分に説明できなかった歯
周病と全身疾患発生との因果関係の解明に、合理的な生物学的分子基盤を提供する。
歯周病
2001年のギネスブックに全世界で最も蔓延している疾患は歯周病と掲載されましたが、何と世界の成人の半数は歯周病に罹患していると考えられています。感染する時期を見ると、早い人では乳歯が生え始まる6ヶ月時に感染し、15歳頃から増加し、50代ではほとんどの人が感染していると言われています。以前は歯槽膿漏という言葉が用いられていましたが、現在では歯周病と称されます。歯周病は歯を取り囲む歯周組織における慢性の炎症であり、最終的には歯が抜けてします。歯周病が発症するには歯周病菌に感染しなくてはなりませんが、虫歯菌は親から、歯周病菌は恋人から感染すると言われます。日本でも歯科検診を行うことを政府が決定しましたが(実施年度は未定)、歯周病により歯が脱落するのを防ぐだけではなく、歯周病になると重要な全身疾患を発生しやすくなる事が明らかになり、その予防を目的に歯科検診を実施することになりました。
日本では歯周病に対する関心が諸外国より遅れており、古くから全身疾患との関連性が知られていました。どの様な全身性の疾患が歯周病と関連があるかが1980年代後半から行われた疫学的な調査から、心血管系疾患
口腔内には大腸に次ぐ密度の細菌が棲息している。腸内細菌と同様にそれらは病原細胞の定着防止、IgA産生を誘導して口腔内の恒常性を維持しているが、細菌叢の構成異常を来すと、う蝕や歯周病を誘発する。口腔内細菌の構成異常は口腔内の固有疾患、とりわけ歯周病を誘発するだけでなく、糖尿病、動脈硬化性疾患など腸内細菌の構成異常も関連する多様な疾患のリスクを高める事が明らかになってきた。
2019年にジンジバリス菌がアルツハイマー患者の脳内で確認された。動物実験ではジンンジバリス菌をマウスの口腔に感染されると脳内へ移行することが確認され、アミロイドβ(アルツハイマーを発生させる)が増加することが明らかになった。またジンンジバリス菌
を減少させるとアミロイドβの産生量が減少し、歯周病の治療の有用性がた報告されている。
2000年前にギリシャのヒポクラテスは歯を抜くと関節炎が治ることがある。この現象が研究により明らかになったのは1980年。日本臨床歯周病学会の報告では歯周病があると脳梗塞の発生率がない人の2.8倍高いという。
噛む効果 2024 6/6に記載あり
厚労省の調査では日本人の8割が歯周病にかかっていると報告されており、自分だけは大丈夫などと間違っても考えないで、歯周病であると思い治療を進めたほうが良いでしょう。毎日の口腔ケアや定期的な歯科検診、そして適切な生活習慣の見直しによって、歯周病を積極的に予防する事が望まれます。
よく「病は気から」と言いますが、「病は口から」です。口腔の管理を積極的に行うことにより歯を長く維持できるだけでなく、生命を脅かすような病気を予防しましょう。
薬剤服用の注意
夜に飲むと効果的な降圧剤の代表例が、レニベースやカプトリルなどのACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬であるが、ACE阻害薬を夜に服用すると、降圧効果が長続きする。翌朝の血圧も十分に下げられ、人によっては次の日の昼間まで効果が持続する。
ACE阻害薬を飲むと空咳が出やすいという副作用が難点だったが、ACE阻害薬を飲む時間を夜に変えると空咳を軽減できる。
セララなどの選択的アルドステロン拮抗薬やアルダクトンほか抗アルドステロン性利尿薬はループ利尿薬などに比べて利尿効果が高くない。従って、夜に飲んでも深刻な問題にはならないことが多く、高血圧と睡眠時無呼吸症候群や肥満などを併発している人にはメリットのほうが大きい。夜に飲むと、喉頭の浮腫を取って睡眠時無呼吸を改善するという論文もある。
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